むし歯などのQ&A(Answer)
小さいむし歯なのにどうして大きく削ってしまうの?
小さなむし歯といっても、それは素人判断で小さく見えるだけです。むし歯ができた部位によりますが、特に咬合面の溝の場合は点や線に見えても中でかなり広がっているのです。
歯と歯の間のむし歯でも、自分で気付いたときは鏡等で見えるところは小さくても実はかなり大きい場合があります。痛みがなく詰めるだけで済むつもりでも実際には神経を取らないといけないこともあります。決して余分には削っていないのです。
又、詰ものや冠を維持させるために(毎日毎日数kg~数十kgの力を受けている)形を整える必要があり、そのために止むを得ず広げる部分もあります。歯を削っていますが全体的には歯を守る仕事なのです。
痛くないのに神経を取られました。なぜなの?
歯の神経は気まぐれです。わずかのむし歯でも凍みる場合がありますが(極端な例ではむし歯がなくても凍みる=知覚過敏等)かなり神経に近いむし歯でも全然痛みがない場合もあります。
痛みがなくてもむし歯を削っていると神経が出てしまい、あるいは出なくても神経をかなり刺激する深さまで削らざるを得ず、そのため後で神経が痛む場合は取ることになります。
痛みがないときにたまたま神経を取ったとしても、仮に放置してあればほどなく痛みは出てきたであろう状態です。症状がない=軽度というわけではないのです。
むし歯がないのに神経を取ることってあるのですか?
いくつかの場合が考えられます。
1.知覚過敏が著しいとき
2.歯周病が進行して歯の根の先端の方から菌が侵入した場合
3.打撲など強い外力を受けた場合。破折して神経が出てしまった場合はもちろん、出ていなくても亀裂があったり、あるいは表面上大丈夫でも数日から2~3ヶ月で神経が壊死(えし)してしまった場合
4.咬耗、摩擦が強く神経が表面に近くなり強く凍みてきたとき
5.ブリッジの土台となる場合に、被せるために歯を削ると神経が出てしまったり出なくても強く凍みた場合
6.軽度の歯列不正を矯正ではなく冠を何本かに被せて治す場合に神経が出てしまう場合
7.原因不明だが明らかに神経が痛んでいる場合
むし歯のなりかけって元に戻るのですか?
唾液中はカルシウムを含み、歯の表面がごくわずかに脱灰(カルシウムが酸で溶かされる)しても、修復する作用があります。
肉眼でわかる『なりかけ』は殆どむし歯になるので詰めることが多かったと思います。現在は研究が進み、意識してブラッシングをしていると進行しない場合があると解ってきました。
従って削らず様子を見る場合があります。但し、やはり進行してしまうことがあるので定期的観察が重要です。
むし歯を削って金属で詰めて貰ってから凍みますが大丈夫ですか?
むし歯は削って除去しなければなりませんが、削ること自体が歯の刺激になります。従って、詰めた後でもやや敏感な状態が続くと凍みるわけです。
また、削った後に金属で詰める場合、金属は温度をよく伝える性質のため、冷たいものが接触した場合、歯質により暖められず低い温度のまま神経の近くまで達すると凍みます。熱いものでも同じです。殆どは馴れますから問題ありません。
神経を取っても歯が痛いのはなぜですか?
(1)治療中の場合
歯の中の神経が入った管は複雑に枝分かれしていることが少なくありません。レントゲンは、木に例えると太い幹の部分だけ写り、治療の多くは幹の部分の清掃消毒を行います。しかし実際は枝の部分があるのです。枝の部分には器具が入れられませんので、幹の部分から染み込んでいくことを期待します。
通常は幹の部分を綺麗にすれば痛みがなくなり冠や差し歯に移行できます。しかし、枝分かれした部分がずっと生きていてしかも炎症が続く場合があります。この場合、自覚症状として痛みが続きます。
また、神経を取った後の歯の根の先にできた傷口の炎症が続く場合があり、暫く痛みます。対処法は幹の部分の清掃消毒を続けることです。たまに引きにくく回数がかなりかかる場合があります。
(2)神経を取って被せた歯が何年かして痛み出した場合
歯の中の神経がなくても、歯は依然として身体の一部であり周りに神経があります。歯に再発した初期のむし歯は痛まなくても、細菌が徐々に侵入すれば歯の周囲で炎症が起きて痛みを発します。
この場合は、鋭く凍みるような痛みではなく、鈍くずんと響く痛みです。ひどくなると激しく痛みます。細菌が侵入していくのは、むし歯の再発の場合、長年使用して隙間ができてきた場合、歯質が破折した場合があります。
歯の中と関係なく歯周病から痛みが出ている場合もあります。再び冠を撤去せず歯周病の処置(ブラッシング、歯石除去)で引いていきます。
歯が凍みるのはむし歯ですか?
むし歯の場合が多いですが、知覚過敏症の場合もあります。不適切なブラッシングや歯周病もあるいは噛み合わせの不良その他で歯の根の表面が少し露出してくると、むし歯でなくても凍みる場合があります。
それ以外に、歯周病から菌が歯の神経に入る場合、長年使用して歯に亀裂が入った場合も少ない頻度ですがあります。
飛び跳ねたりすると歯に響きますがむし歯ですか?
むし歯でしょう。10代など若い人にあります。一度詰めた歯の再発が経験上多いように思います。
キシリトールについて教えてください
天然には、ラズベリー、プラム、苺、ほうれん草などに含まれます。工業的には、樺の木やトウモロコシの穂軸などを原料として化学的に生成しています。
甘味は砂糖と同じ程度で、カロリーは3/4、清涼感があり、きれがやや早く他の甘味料と併用することが多いようです。一度に大量に食べると軟便、下痢になる場合がありますが特に害はありません。
キシリトールの効果は、むし歯を作る主な原因のミュータンス菌がそれを利用できず、歯を溶かす酸ができないこと、菌そのものの発育を抑える作用、ごく初期のむし歯でカルシウムが抜けたところを再び修復する作用などが挙げられます。
ある程度持続して口の中にあることが条件ですので、ガム、タブレット菓子、歯磨き剤、洗口剤などに利用します。
ガムの場合、一日3回毎食後10分くらい歯磨きの前に噛むと効果が出るとのことです。むし歯になりやすい人は5回くらい噛みます。ただしキシリトールが50%以上であり他の甘味料もむし歯になりにくいことが条件です。
菓子類は平成9年末頃で約17社50種類ほどの商品が出回っていますが、だいたい条件を充たしているものの5~30%の製品があり注意を要します。
また、キシリトールがオールマイティーではなく、以前から多く使用している北欧では歯口清掃に対する関心が高く日本人の何倍もよく磨きます。そういう条件の下でこそ効果が発揮するのであり、歯磨きをおろそかにしていてはむし歯は減りません。
一生懸命磨いているのに、どうしてまたむし歯ができてしまうのですか?
1回治療した歯が数年後またやり直しになると、疑問に思うでしょう。「治療の仕方が悪いのではないか?」と思ってしまうようです。
TVのコマーシャルなどで、むし歯の原因のミュータンス菌をどうのこうのと言っていますが、むし歯の原因菌はいっぱいあるのです。ミュータンスだけでもまだ完全に制圧する方法はないのです。
私はよく風邪に例えています。風邪は何回でも引いてしまう。風邪の原因はインフルエンザウィルスだけではない。注意すべきはインフルエンザだが、他にもいくつもある。ワクチンはあるが、一時の一定の型のみで打ったらかからないわけではありません。
歯茎が腫れて、抗生剤を飲んで一旦引いてもむし歯が治るわけではありません。むし歯の予防は相変わらず歯磨きです。食生活の注意も含めて、古代から変わりません。風邪の予防法は昔と変わらないはずです。
風邪とむし歯が違うのは、治療に苦痛と時間がかかることです。自費ならお金がかかります。あと、人からすぐうつるわけではありません。風邪は昔と比べて減っているのでしょうか?相変わらず流行しています。
むし歯は少しずつ確実に減っています。北欧はかなり減っています。全体で見た場合私たちの努力の賜物と言っては横柄かもしれないが、少しはそう思って欲しいと願ってもバチは当たらないでしょう。
歯磨きしないでむし歯にならない方法はありませんか
野生の動物にはほとんどむし歯はありません。家畜にはあります。全く文明を忘れ原始生活をすればむし歯にならないかもしれません。野生動物に匹敵するとすれば、石器時代くらいの生活でしょうか。
もう少し時代が下って縄文時代くらいでは?しかし、縄文人でも既に虫歯、歯周病があったようです。最近の研究で結構食生活は豊かで調理をいろいろしていたらしく、既に文明的な生活に入っていると思われます。古代エジプトでも支配階級は現代人と同じようにむし歯・歯周病に悩んでいたことがミイラから分かるのだそうです。
さて、あなたはお風呂に入りますよね?トイレで用を足したら拭きますよね?お口も汚れるのです。面倒だから入浴を止めるのでしょうか?面倒だから1分で出てきますか?
しかも歯は食物を砕くために強い力で打たれ続けています。それでも食物を懸命に砕き続けます。同じ身体の一部、同じDNAなのに、皮膚はきれいにして、歯や歯茎は汚いままはおかしくないですか?生きるための栄養を摂取し食べる幸せのために打ちのめされ続けているのに、歯磨きしてケアしないのはおかしくないですか?
歯を白くする歯磨きは本当に白くなりますか?
歯の表面は、構成成分であるハイドロキシアパタイトが溶けたり(脱灰)再び唾液から補給したり(再石灰化)を繰り返しています。溶けていく方向に傾くと虫歯になります。僅かに脱灰したところを積極的に補修しようと、アパタイトを成分としたものが白くする歯磨き粉です。
また、肉眼で見えない細かい亀裂が誰にでもあり、そこにも浸透します。その結果わずかですが白くなるようです。しかし薬剤を使うホワイトニングほどは白くなりません。また歯の表面に沈着物がある場合は先に除去する必要があります。人工物は白くなりません。
昔は朝起きてすぐ磨いたものですが、それではいけないのですか?
戦前生まれの私の両親は、朝起きたら歯磨きをしていました。私も(歯学部へ入るまでは)18年間そうしてきました。1回しか磨いていませんでした(^^;)。それでもあまりむし歯にならなかったのは、生まれ持った歯の質のおかげでしょう。昭和40~50年代はむし歯の洪水で児童生徒のほとんどが学校検診でむし歯ありでした。
粗食の昔とお菓子が溢れている高度成長期以降~現代で同じ対応は問題です。昭和から平成にかけて最低1日に2回以上食後の歯磨きが根付いて現在のむし歯低下に繋がった感があります。最低2回、理想は3回です。
但し睡眠時は唾液が減るので、口の中の常在菌が増加します。菌を減らしておくことは大切です。起床後すぐと朝食後の唾液を調べると、起床後すぐの方がむし歯になりやすい症状であると分かっています。従って食前の朝の歯磨きも効果があります。洗顔と同時にごく簡単に磨いて、食後しっかり磨くとよりよいかもしれません。ただ無理のない習慣で、と考えると毎食後のみの方が良いと思われます。
お勧めの歯磨き粉はありますか?
歯磨き剤はいらないという主義主張があります。唾液が一番の歯磨き剤といわれます。きちんと磨いていれば歯垢(プラーク)をブラシで除去し、歯や歯茎の健康は保てるという意見です。
そうは言っても、食器を洗うのに洗剤は使いますし、全く何もつけないでいると着色や水垢のようなものが付着する場合があります。また、歯磨き剤の薬用成分でより良い状態を求めたいところです。
以前は歯磨き剤の研磨剤で長い間をかけて歯茎が下がったり歯が摩耗する弊害があり、少量つければ良いと言っていました。現在は改善し、薬効を充分期待するために多めにつけるようになりました。歯周病予防か、知覚過敏対策か、歯を白くしたいか。目的に応じてそれぞれ選択すれば良いと思います。
「医薬部外品」の歯磨きとそうでない歯磨きでは「医薬部外品」の方が効果が高いかもしれません。ただ販売価格が上がるので「医薬部外品」の適用をあえて取らないこともあり表示がないから効果がないわけではありません。
液体とペーストのどちらが絶対良いということはありません。災害に備えたストックは液体が良いです。避難所は水が不足しがちだからです。普通の歯磨き剤はさまざまな成分が入っていますが、普通の歯磨き剤の成分を嫌う方がいるようです。ハーブ入りや身体に良い○○入りなどは好みで良いと思います。
子供の歯並びを悪くさせないためには何に気を付けたらいいですか?
躾をきちんとし、むし歯をつくらない。指しゃぶりは良いが、5歳前後までに止める。口をぽかんと開けずきりりと結ぶ。鼻で呼吸する。姿勢を正す。
うつ伏せ寝させない。していたらひっくり返す。上向きで低い枕で硬めの布団、ベッドで寝る。とにかくよく噛んで、唾液をいっぱい出させて飲み込む回数を増やす。1口30回以上が理想。幼児の時は唇の筋力の発達のためおしゃぶりをつけさせるのは良い。
小・中学生は、頬杖や机の上での突っ伏せ寝をしない。シュガーレスガムをよく噛むのも良い。
下の前歯の最初の永久歯が乳歯の内側に並んで生えてきてしまいましたが大丈夫ですか?
下の前歯は内側に生えることが多く心配して来院されますが、乳歯の動揺があれば自然交換を待っても多くは大丈夫です。
しかし、そのまま乳歯が抜けず内側にどんどん伸びてしまうことがありえるので、心配な場合は診せて判断した方がいいでしょう。
最初の歯は列からはみ出ていてもほとんど中に入っていきます。問題は2本目です。交換がうまくいく・いかないに拘わらず、生えるスペースが足りないと内側にあるままのこともあります。
フッ素は塗った方がよいのですか?
フッ素と一言で言っていますが、フッ化ナトリウムなど歯の予防に効く化合物です。
車のコーティングなど他でもフッ素と言っていますが、それぞれの目的のための違う「フッ素」で物質的に全然違うので混同しないようにしてください。
むし歯になっていない部分に塗布すると、歯の結晶構造にフッ素が添加し耐酸性が増すと言われています。実際は3~4割程度の予防効果です。5歳くらいまで年に2~3回程度塗布します。12歳くらいまでは3~4回塗布すると良いでしょう。多く塗ればいいわけではありませんのでご注意ください。
それ以降はあまり歯に浸透しなくなるので、家庭で毎日塗布するごく薄い濃度のものも販売しています。家庭用は何歳でも効果はあると思われます。
予防のフッ素塗布は当院では無料で行っています。市町村の保健センターで塗布してくれる場合はありますが、あま市では2歳児健診のときだけです。歯科医院ならどこでも可能だと思います。
健診でむし歯が結構あり、乳酸菌飲料やスポーツドリンクが良くないと言われましたが、身体に良いはずではないのですか?
乳酸菌そのものは善玉腸内細菌で身体に良いです。しかし、小児が好むように砂糖が入っており、甘未が酸性のむし歯に絶好の環境を作ってしまいます。
スポーツ飲料やアルカリイオン飲料は、小児が発熱して身体を消耗したときに小児科医に勧められますが、そういう場合だけにしてください。今は幼児のむし歯はかなり減っており、1歳半や3歳時健診で数本のむし歯がある子供の多くは乳酸菌飲料やスポーツドリンクを多飲していることがわかっています。
歯周病って何ですか?
歯周病には、大別して歯肉炎と歯周炎があります。
歯肉炎は主に若い人で歯茎に炎症(発赤、腫脹、出血等)があっても歯槽骨(歯を支える骨)に達してないものをいいます。歯周炎は歯茎の病気ですが、歯槽骨で炎症が達しているものです。おおむね25歳以上は歯周炎になっていることが多いです。十代で歯周炎にかかっていることもあります。
歯周炎は長期経過を辿り、だんだん骨が吸収し失われて歯が装用し最終的に抜け落ちます。初期は無症状ですが、口臭、出血、腫脹、噛むと痛い、排膿、歯の動揺などの症状が出ます。
治療はブラッシングや歯石除去PMTCなどです。自己管理はなかなか難しく、定期検診が重要です。
乳歯の噛み合わせが反対(受け口)なのですが?
乳歯列のときはそのまま様子をみます。
よく噛んで食べていると摩耗して自然と正常に戻る場合があります。多くは永久歯に生えかわるとき正常に戻ります。永久歯前歯が反対になった場合、その時点で治した方が良いと思います。
乳歯列のときは正常な噛み合わせで、永久歯で反対になってしまうこともあります。反対咬合(受け口)は早期に矯正治療をした方が良いと思います。成長してからだと抜歯のみならず骨切り手術が必要になる場合があります。
歯の矯正は何歳から行うのが良いのですか?
まず、永久歯で受け口になった場合はすぐ開始します。6~7歳頃です。乱杭歯・八重歯は確実に予測できる時点で始めます。当院では8歳くらいから始めています。
永久歯が揃ってからにしなさいと説明する歯科医がいますが、生える場所が足りない場合は4本ほど犠牲(抜歯)を伴います。遅くても10~11歳頃に始めれば、顎の骨の成長を促し抜歯せず並べられます。
歯の矯正は子供しかできませんか?
何歳でも可能です。ただ、年齢によりできることとできないことがあります。中学生以上で生える場所が足りない場合は、抜歯を伴う場合が多いです。また、成人は差し歯やブリッジなどの治療を施しているケースが多く、矯正器具がつけにくくなってきます。
矯正は歯を必ず抜くのですか?
全部の永久歯をきちんと並べるスペースがなくて抜歯を伴うことは多いでしょう。ただし、スペースがあれば抜歯しない場合もあります。
当院で行っている乳歯が残っている時期から始める方法は、抜歯しないようにするものです。矯正にはいろいろな流儀があります。成人でもほとんど抜歯しないと謳っている歯科医もいます。
矯正を受けるなら、矯正を専門とする歯科医院の方がいいですか?
状態によってはその方がいいでしょう。でも専門でないといけないわけではありません。「消化器科」と出ていなければ胃腸の病気を診られないわけでなく、内科でも良いのです。注意する点がある場合もう少し詳しく調べてもらいなさいと消化器科を紹介されます。
矯正も、全く行わない歯科医師はともかく、ある程度手に覚えがあれば一般歯科を行いながら矯正も行う先生はいます。
当院も矯正を専門とする歯科医院ではありません。大人で抜歯を伴う場合や困難と思われる場合は専門分野が得意な歯科医院をご紹介しています。また、矯正のみで済む治療でなく、歯を動かしたらすぐ差し歯やブリッジにするとか、一般歯科と混合して行う場合は一般的な歯科医院の矯正が好ましいケースもあるでしょう。
また、抜歯してスペースを作る方法で上手に並べる歯科医院もありますから、小さいうちから診ていて、成長を促し抜歯に至らないようにする歯科医院ならその方がいいのではないでしょうか?
なぜ、歯並びが悪くなるのですか?
堅いものを食べなくなって顎の成長が劣ったという説明は一理ありますが、言葉足らずだと思います。本当に顎の成長が劣っていれば、抜歯せず並べるのは不可能です。しかし、実際は可能なのです。
顎の骨には基底骨と歯槽骨の部分があります。噛まなくて劣っているのは歯槽骨です。歯槽骨とは歯が植わっている部分のことです。実は専門家の間でも、顎が小さくなったという研究と、変わっていないと相反する研究の両方があるのです。
これはどの部分を調べているかによります。動物の進化退化は何十年というごく短い年月で起こらないのです。誕生後の栄養が良ければ身長が伸びるのと同じように、よく噛めば歯槽骨の部分が発達し自然と良い歯並びになります。
良い歯並びにするには、授乳期から注意が必要です。哺乳瓶はミルクが出過ぎる乳首は厳禁です。しっかり顎を動かさないと出てこない製品を選ぶ必要があります。早くから離乳させる必要はありません。1年くらいは母乳で良いのです。
その後も唇や舌の筋肉の発達を促すためおしゃぶりを3~4歳までくわえさせると良いです。口をぽかんと開いている子供が目につきます。あるいはうっすら開いています。これでは叢生(そうせい)=乱杭歯になってしまいます。口元をしっかり閉じていてこそ、舌と唇の適度な圧力で顎の骨は発達します。
また、食事は一口30回くらい噛むのが理想です。そう言ってもどうしても軟らかいものが多いので、シュガーレスガム等を口を閉じてよく噛むと良いです。左右均等に噛みます。
また、ひと頃のうつ伏せ寝信仰で癖がついている子は、なるべく仰向けに寝るように努力がいります。うつ伏せ寝は顎に横から力がかかり歯並びを悪くします。横向きでも堅い、高い枕等では顎を圧迫しますので同じように害があります。
上の歯が出っ歯の子は舌先を歯につけすぎるのです。受け口の子は舌がだらんと下顎の裏にあり、下顎が広がってしまうのです。
口を開けると舌は下顎にありますが、口を閉じていると舌先は上の歯の裏の真ん中で歯に接触するかしないかの位置にあり、舌の背はぴたっと上顎についています。自然にこの位置になっている子は歯並びが綺麗です。
口を開いていて、舌が顎についていない子は乱杭歯に、上に触りすぎる子は出っ歯に、下にだらんとなっている子は受け口にります。
いろいろな要因がありますのでこれが全てではありませんが、矯正するときは、当院では舌・口の動かす練習も行います。
歯ぎしりって歯医者さんで治りますか?
歯ぎしりとは、眠りが浅い睡眠時に、歯と歯を強くこすり合わせてきりきりと異常な音を発することを指しています。
歯科では、食いしばったり、かちかち音を立てたり、音はしないまでも歯をこすり合わせていたり、「歯ぎしりして悔しがる」ように起きているときの癖も含めて広い意味で捉えています。
原因は、噛み合わせや噛む筋肉の動きの異常、精神的ストレスが組み合わさって起きますが、はっきり解っていません。一説によると9割以上の人に何らかの歯ぎしりをしているといわれます。
歯ぎしりがひどいと、睡眠不足や頭痛、異常な歯のすり減り、歯の破折、歯周病(歯槽膿漏)の悪化などをきたします。
治療は、噛み合わせの調整(少し削る)、樹脂製のマウスピースを口の中に入れて歯のこすり合わせを防止します。少なくとも、迷惑な音を消すことはマウスピース(ナイトガード)で十分対処できます。
就寝前にリラックスしたり、時に安定剤を用いる場合もあります。子供の歯の交換期に発生するものは、原因の乳歯を抜いてすぐ治る場合がありますが、多くの場合、精神的ストレスとともにあり、歯ぎしりそのものを消すことは難しいと思われます。
横向き寝など、寝相による歯への影響はどの程度あるのでしょうか?
三重県の開業医は、うつ伏せ寝の子供とそうでない子供を調べ、うつ伏せ寝の子供の方が歯並びが悪いという報告をしました。その他、顎の関節を痛めることも考えられます。
東大口腔外科の西原講師によると、横向き寝やうつ伏せ寝では、一晩で1ミクロン、1年で365ミクロン、3年で1ミリ、30年で1センチ動く。すなわち歯が抜けると言っています。上を向いて、低い枕で硬めの布団で寝るのが良いです。
転んで歯が抜けた。どうしたら良いですか?
抜けた歯は汚れを簡単に流水で洗い(こすってはいけない)、学校の保健室などに保存液があれば浸し、なければ生理食塩水(0.9%食塩水)や牛乳に浸して歯科医院へ急いでください。
何もないときはそのまま口に含み(幼少で飲み込む恐れがあるときは親や他人でも可)同様に歯科医院へ急ぎます。とにかく乾燥させないでください。
水道水に浸すのはあまり良くありません。唾液に浸すのが良いです。当日なら多くは再殖できます(破折が多いときは不可)。予後は良好な(わずかにあとで根が吸収してもそのまま長持ちする)場合があれば、数年で脱落してしまう場合もあります。
とにかく最初は再殖し保存することを考えます。乳歯の場合で、ある程度根の吸収が進んでいるときは、抜けたままにする場合もあります。
前歯をぶつけましたが、ちょっと触ると少し痛い程度ですが、大丈夫ですか?
かなり動揺があるのでなければそのまま様子を見て良いです。しかし、大丈夫な場合もそうでない場合もあります。
歯の神経は横からの衝撃に弱く、その場ではよくても2週間から2~3ヶ月の間にだんだん壊死してしまう場合があります。暫く経たないと状況がはっきりしません。壊死すると、歯が中から黒っぽくなってきます。神経が死んだ証拠です。この場合、裏から穴を開けて神経の治療をします。
ただし、乳歯や子供の永久歯の場合は、まだ血行旺盛で一旦神経が壊死しかかって黒ずんできてもまた快復することがあります。すぐ取らずにしばらく様子見の場合もあります。黒くなった歯の歯茎のところに膿が出ている場合はすぐ手を付けます。
健診でむし歯になりかけ(CO=シーオー)と言われましたが、歯科医院ではむし歯だから削って詰めないと言われました。むし歯はすぐ進むのですか?
子供や若い人は1ヶ月くらいの差で進行することがありますが、すぐ進むものではありません。見立てが歯科医により差があるということです。
むし歯の進行程度は連続しています。デジタルの世界のようにはっきり分けられるものではありません。微妙な場合はどちらにも転ぶことがあり得ます。なりかけの場合は、今は再石灰化といって唾液のカルシウム成分が沈着して正常に戻る、あるいはそのまま進行しないこともあるという見解です。
なりかけと言われて、削って詰めるとなれば少々納得しにくい部分がありますが、歯科医院の方が正確な診察ができるはずなので、その場合は詰めた方がいいでしょう。
学校の歯科健診でむし歯があると言われましたが歯科医院で診てもらったらないと言われました。なぜですか?
学校に限らず健診の場は口の中を診察するのにあまり適していないことが少なくありません。暗いし、大勢を診ないといけないので見誤る場合があると思います。
ただ、それでも自分では気づかない多くのむし歯、歯周病、その他の異常を発見できますので、1歳半、3歳、住民健診、職場での健診があれば参加してほしいと思います。
実際には、健診で異常がなくても歯科医院で改めて見るとむし歯がある、本数が多いことが多いと思います。明るい光で見ますし、レントゲンでしか分からないこともあるからです。
自費のセラミックの歯はどのくらい持つのですか?
洗濯機やテレビを買うとき電気店でどのくらい持つか?と聞いても、使い方によると言葉を濁されることは少なくありません。同じように工場で作られた機械ですから、1日にどのくらいの量を使用したらおおむね何年と言ってくれても良いのにと思うことはあります。
口の中に入れるものはその人に合わせて個別に作ります。また、口の中はいろいろな不確定要素にさらされます。歯磨きの程度、歯の質、唾液の質、歯周病の状態、食生活、噛み合わせの状態、歯にかかる力の状態(歯ぎしり、食いしばり、スポーツ、力仕事等)など。
セラミックの歯は、プラスチックの白い歯と比べれば確かに優れているので長持ちしますと言いますが、どのくらいかはっきり言いにくいです。
しかし、万単位のお金がかかるわけですから、少なくとも10年と答えています。持てば15年でも20年でもいけるはずです。逆に、ある程度手入れし定期検診をしても、10年持つかどうかこちら側からみて不安がある場合は、あえてセラミックを勧めません。
万が一、ぶつけたり不用意な使い方や悪習癖もなく破損した場合ではなく、通常の使用で10年未満で破損した場合は、例えば5年でやり直しとなった場合は、例えば半額で同じものを製作するなどして患者さんの不満が出ないように心がけています。
前から4番目の歯を被せることになりましたが、保険が利かないと言われましたが本当ですか?
真ん中から5番目までは単冠でしたら保険で白い歯が被せられます。
ただし、3番目までは金属裏打ちのある白い樹脂の歯が可能ですが、4・5番目は樹脂のみの冠です。より力がかかるところなのに弱いものしか保険が利かない保険制度の矛盾があります。
(※平成26年4月から白いハイブリッドCAD/CAM冠が健保適用になりました)
従って、樹脂のみでは製作に問題がなくても早期(1~2年)に破損する場合がたまにあり、それでは問題だと樹脂の白い歯を入れたがらない歯科医はいるようです。
しかし保険医である限り、できない、うちではやらない、と言い切るのは問題です。全てが早期に破損するわけではないので、保険診療を求められた場合は、その性質を理解していただいて白い保険の樹脂の歯を当院では入れています。
上記の説明をした上で、白を諦めて金属にする方はいるし、セラミックにする方もいます。
保険のものは良くないと言われ、自費のものを強く勧められましたが、保険ではだめなのですか?
ここでは、いろいろな材質について省きますが、良い材料のものと理工学的性質を詳細に比べると、保険で決められた材料は見劣りします。
しかし、だからといって材料の差がストレートに歯を持たせることに直結するとは限りません。保険のものでも歯に被せたり詰めるものはオーダーメイドなのです。機械は使いますがハンドメイドでもあります。
比べる対象より見劣りしても、イコール悪いものではありません。ブラッシングなどの手入れ、栄養状態その他、口の中のいろいろな条件が整って初めて、保険と自費の材料差が出てくるのではないでしょうか?
保険でもしっかり手入れし、定期検診を受ければそこそこ持たせられます。しかし、どうせ保険だからまたやり直せばいいとばかりに大切にしない方は少なくありません。逆にお金がかかったものは大切にします。どうせ悪くなるから保険でと思っている方はやはりそのようになるのです。
また、何度治療しても再発します。意識を高くすれば保険のものでも良い冠・詰め物になります。お金をかけたから大切にしようという気持ちになるのであれば自費でもよいのではないでしょうか?
知覚過敏症って何ですか?
むし歯でないのに、むし歯のように歯が凍みる状態です。
歯茎が下がっていて冷たいものの刺激、歯ブラシの刺激や爪の先の刺激で凍みたり嫌な感じがします。
原因は良くない歯磨きと言われますが、はっきりしないことが多いです。噛み合わせの悪さや歯ぎしりなどで余計な刺激が加わることもあるようです。体調によって感じたり感じなくなったりします。
治療法は塗布薬、ソフトレーザー照射、咬合調整、詰め物、ひどいと神経を取る場合もあります。治療があまり奏効しないことがありますが、刺激の程度が軽度であればそのまま様子をみる場合もあります。
顎関節症について教えてください
顎の関節がカクカク音がしたり、痛かったり、口が開けづらい症状をいいます。
初期に少し音がする程度はすぐ治療をするわけでありません。悪習癖の是正で治る、あるいは進行を止めます。例えば、右噛み癖の人は右の顎の関節が深く左が浅くなり、多くは最初左に雑音が出ます。進行すると両方に症状が出てくることがあります。
これは典型例ですが、実際は噛み合わせや頚椎の状況により複雑なこともあります。仰向けに寝て歯ぎしり・食いしばりを止め、両方で均等に噛めば良くなっていきます。多少進行していても習癖是正で治る場合もあります。
当院では、鍼灸、麻酔、関節周囲筋のマッサージ等で良好な結果を多く得ています。頚椎の調整やマウスピースを使用する場合はありますが、マウスピースは夜だけ、日中はごく小さいものにして負担を軽減しています。
噛み合わせの調整はいらないことが多いです。歯の欠損やかなり乱れている場合は、マウスピースや矯正で治していくこともあります。